【相談事例】相続人がいない方の遺言・死後事務対策
- 2026.10.13
相続人がいない場合、自宅や預貯金を誰に渡すのかだけでなく、亡くなった後の葬儀、納骨、不動産の売却などもあらかじめ考えておく必要があります。
本件では、遺言による寄付と死後事務委任を組み合わせ、将来に備える方法を検討しました。
依頼者の属性
氏名:田中さん(仮名)
住所:水戸市
性別:男性
年齢:70代
争点
分割方法
遺産の範囲
※本件は相続人間の遺産分割トラブルではなく、将来の相続・死後事務に備えるための生前対策についてのご相談です。
ご依頼の背景
田中さんには、将来ご自身が亡くなった際に財産を承継する身近な相続人がいませんでした。
そのため以前から、
「自分が亡くなった後、自宅や預貯金をどうすればよいのか」
「葬儀や納骨を誰に頼めばよいのか」
「お墓を管理する人がいなくなったらどうなるのか」
といったことを心配されていました。
田中さんのご両親と弟はすでに亡くなっており、現在のお墓にはその3名が納骨されていました。しかし、田中さん自身が亡くなった後は、そのお墓を継続して管理する人がいません。
そこで、将来的には現在のお墓から同じ墓苑内の永代供養墓へ移し、ご家族と田中さん自身を永代供養してもらうことを希望されていました。
また、田中さんは、ご自身の財産について、最終的には宗教法人へ寄付したいとの希望を持っていました。
もっとも、不動産についてはそのまま寄付するのではなく、田中さんが亡くなった後に自宅を売却し、売却代金から葬儀費用、納骨費用、不動産処分費用など必要な支払いを行ったうえで、残った財産を寄付する方法を考えていました。
さらに、死亡届を提出できる親族についても事前に確認し、親族から協力について了承を得ていました。
このように田中さんは、単に「遺言を書きたい」というだけではなく、死亡届、葬儀、火葬、納骨、お墓、不動産の売却、残った財産の寄付までをできるだけ一連の流れとして準備しておきたいと考えて相談されました。
弁護士の対応
今回のように相続人がいない方の場合、財産を誰に渡すかだけを決めても十分とは限りません。
亡くなった後には、葬儀や火葬、納骨、住居の整理、各種契約の終了、不動産の売却など、さまざまな手続が発生するためです。
そこで、まず田中さんが希望されている内容を一つずつ確認しました。
特に重要となったのが、
「財産を最終的にどこへ渡したいのか」
「自宅をどのように処分するのか」
「葬儀はどの程度の内容を希望するのか」
「遺骨と現在のお墓をどうするのか」
という点でした。
公正証書遺言による遺贈を検討
田中さんは、残った財産を宗教法人へ寄付することを希望されていました。
そこで、自宅などの財産を換価し、必要な費用を支払った後の財産を宗教法人へ遺贈する内容の公正証書遺言を作成する方向で検討することになりました。
遺言を作成するためには、財産の内容を把握する必要があります。
そのため、戸籍謄本のほか、預貯金の残高が分かる資料、不動産の固定資産税納税通知書などを準備していただくことになりました。
特に公正証書遺言では、財産額に応じて公証役場の手数料が決まるため、不動産や預貯金のおおよその価額を確認しておく必要があります。
自宅は売却して現金化する方法を検討
田中さんの自宅については、そのまま遺贈するのではなく、亡くなった後に売却し、現金化する方法を検討しました。
一般の仲介による売却では買主が見つかるまで時間がかかることがあります。
田中さんとしては、「自分が亡くなった後の手続なので、多少高く売ることよりも、できるだけ早く確実に処分してほしい」という希望がありました。
そこで、複数の不動産会社から買取価格を提示してもらい、条件を比較したうえで売却する方法が、手続を円滑に進める一つの方法であることをご説明しました。
死後事務委任契約も併せて検討
遺言だけでは、葬儀、火葬、納骨などの具体的な死後事務をすべて処理できるわけではありません。
そこで、遺言とは別に死後事務委任契約を締結する方向で検討しました。
田中さんは大規模な葬儀を希望しておらず、基本的には火葬を中心とした簡素な方法を希望されていました。
また、現在のお墓については、将来的に墓苑内の永代供養墓へ移すことを希望していました。
こうした希望についても、死後事務を担当する側が迷わないよう、事前に内容を具体化しておくことにしました。
さらに、葬儀社についても亡くなってから探すのではなく、生前に候補となる葬儀社と内容を打ち合わせておけば、死亡後の手続をより円滑に進めることができます。
そのため、事前に葬儀社を選び、必要に応じて生前契約を行うことも検討することになりました。
判断能力が低下した場合についても助言
今回のご相談では、遺言と死後事務を中心に検討していました。
もっとも、人は必ずしも元気な状態から突然亡くなるわけではありません。
病気で入院したり、認知症などによって判断能力が低下したりする可能性もあります。
田中さんはすでに入院時などに備えた身元保証サービスを契約していましたが、それだけですべての財産管理に対応できるとは限りません。
そこで、将来判断能力が低下した場合の財産管理についても、任意後見などを含めて今後検討しておくことをご説明しました。
結果
今回の相談によって、田中さんが漠然と抱えていた
「自分が亡くなった後、誰が何をしてくれるのか分からない」
という不安について、必要となる手続を具体的に整理することができました。
今後は、
公正証書遺言によって財産の遺贈方法を定めること、死後事務委任契約によって葬儀や納骨などを準備すること、自宅については売却して費用を精算した後に残余財産を遺贈すること、葬儀社や墓苑とも可能な限り生前に打ち合わせをしておくこと
という方向性で準備を進めることになりました。
また、必要となる戸籍や財産資料についても確認できたため、田中さんとしても「次に何を準備すればよいのか」が明確になりました。
亡くなった後のことを一つひとつ具体化できたことで、将来に対する心理的な負担を軽減することにもつながりました。
弁護士所感
相続人がいない方の生前対策では、「遺言書を作れば終わり」とは限りません。
遺言によって財産の行き先を決めることはできますが、その前後には、死亡届、葬儀、火葬、納骨、住居の整理、不動産売却、各種費用の支払いなど、多くの実務的な手続があります。
そのため、
「財産をどうするか」と「亡くなった後の手続を誰に任せるか」をセットで考えること
が重要です。
特に、ご自身に相続人がいない場合や、頼れる親族が近くにいない場合には、元気なうちに希望を整理し、必要な契約を準備しておくことで、ご本人の希望を実現しやすくなります。
また、不動産がある場合には、誰に渡すのかだけではなく、「そのまま渡すのか」「売却して現金にするのか」「売却費用や葬儀費用をどこから支払うのか」まで考えておく必要があります。
今回のように、遺言、死後事務、不動産処分、葬儀、納骨をまとめて検討することで、亡くなった後の手続をより具体的に設計することができます。
相続や終活に関する悩みをお持ちの方は、問題が発生してからではなく、元気なうちに専門家へ相談することで、選択できる方法が大きく広がります。
早めに準備を始めることが、安心して将来に備える第一歩になります。
おわりに:お気軽にご相談ください
相続問題や、相続人がいない場合の遺言・死後事務について、一人で悩む必要はありません。
みとみらい法律事務所では、水戸市、ひたちなか市、那珂市、東海村などを中心に、相続や生前対策に関するご相談に対応しています。
「自分が亡くなった後のことを誰に頼めばよいか分からない」
「相続人がいないので財産の行き先を決めておきたい」
「自宅の処分や葬儀、納骨までまとめて準備したい」
という方も、まずはお気軽にご相談ください。























