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【相談事例】介護負担と遺産の範囲を整理した相続

2026.10.13

父母の相続をめぐり、不動産や預貯金のほか、父が生前に土地を売却した代金の行方や、長年にわたる母の介護負担が問題となりました。

本件では、遺産の範囲を整理するとともに、依頼者側が担ってきた介護や生活支援を具体化し、遺産分割協議に備えました。

依頼者の属性

氏名:田中さん(仮名)
住所:水戸市
性別:女性
年齢:非公表

争点

遺産分割協議

遺産の範囲

寄与分

分割方法

代償金

ご相談の背景

田中さんから、ご両親の相続についてご相談がありました。

ご家族には複数の兄弟がおり、父親、続いて母親が亡くなった後も、遺産分割が十分に整理されないまま長期間が経過していました。

父親の遺産には、不動産と預貯金がありました。

固定資産税評価などをもとに確認すると、不動産と預貯金を合わせて相当額の財産が残っている状況でした。

一方で、父親の死亡時点の預貯金残高を確認すると、その後に引き出された金銭もありました。

その中には、葬儀費用、お墓の購入費、医療費などに使われたと考えられるものがありました。

さらに問題となったのが、父親が生前に自宅敷地の一部を売却して得た代金です。

父親はがんを患っており、

「治療費や生活費など、何かあった時に使うように」

という趣旨で土地を売却していました。

その売却代金については、母親が管理していた時期があり、その後、母親名義の定期預金などに入れられていたと考えられました。

しかし、母親はその後、脳内出血を発症し、認知症が進行しました。

そこで、家族が母親と一緒に金融機関へ行き、定期預金を少額ずつ解約しながら管理するようになりました。

そのお金は、母親の生活費、入院費、介護施設への入居費などに使われたほか、兄弟の一人に貸し付けた金銭もありました。

ところが、他の兄弟から見ると、

「父親が土地を売った代金がまだ残っているはずだ」

「家族の誰かがそのお金を持っているのではないか」

と考えられる可能性がありました。

田中さんとしては、

「使い込んだわけではない」

「親の介護や生活のために使ってきた」

という思いが強くありました。

また、田中さん側は、父親ががんになった際の通院や生活支援、母親が脳内出血や認知症を発症した後の介護、施設入居までの対応などを長年担ってきました。

一方、他の兄弟は十分に介護へ参加していなかったとのことで、

「単純に法定相続分だけで分けるのではなく、これまで自分たちがしてきたことも理解してほしい」

という希望がありました。

弁護士の対応

まず、現在確認できる遺産を整理しました。

不動産については、固定資産税関係資料などから評価額を確認し、共有となっている土地も含めて財産関係を整理しました。

預貯金については、現在の残高だけではなく、

相続開始時点、つまり亡くなった時点の残高を確認することが重要

であることをご説明しました。

相続開始後に葬儀費用などとして使われている場合でも、まず死亡時点でどの程度の預貯金があったのかを把握したうえで、その後の支出内容を整理する必要があります。

父親の土地売却代金の流れを確認

次に、父親が生前に土地を売却して得た代金について整理しました。

この金銭が父親の財産であり、その後母親が管理していたのであれば、

「いつ、いくら売却代金が入り」

「どの口座に入金され」

「その後どのように使われたのか」

を可能な限り確認する必要があります。

今回の事案では、母親名義の定期預金として管理され、その後少額ずつ解約されていた可能性がありました。

そこで、水戸信用金庫など金融機関の取引履歴を取得し、入出金の経緯を確認することをご提案しました。

過去の記録が十分残っていない場合でも、金融機関の資料、医療費や施設費の領収書、家族の記録などを組み合わせて説明できる可能性があります。

「使い込み」と誤解されないため支出を具体化

相続では、一部の家族が被相続人のお金を管理していた場合、

「勝手に使ったのではないか」

という疑念を持たれることがあります。

そのため、

「介護のために使いました」

という抽象的な説明だけではなく、

「何年頃に病気になったのか」

「いつから認知症が進行したのか」

「要介護認定はいくつだったのか」

「デイサービスをいつ利用したのか」

「いつ施設へ入居したのか」

「医療費、施設費、生活費としてどの程度支払ったのか」

をできるだけ具体的に整理することが重要です。

そこで田中さんには、母親の介護について年表形式でまとめることをご提案しました。

介護の経緯を寄与分の観点から整理

田中さん側は、母親の介護だけでなく、父親が病気になった際にも通院や生活支援を行っていました。

特に母親については、脳内出血後に認知症が進み、要介護認定を受け、最終的には要介護5になったとのことでした。

施設へ入居するまでの期間は、家族による介護負担が大きかったと考えられました。

遺産分割において、相続人が被相続人の療養看護などを特別に行い、その結果として被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合には、寄与分が問題となることがあります。

もっとも、

「長年面倒を見た」

というだけで当然に寄与分が認められるわけではありません。

そのため、

介護期間、要介護度、介護内容、他の兄弟の関与状況、施設に入るまで家庭でどの程度介護したのか

などを客観的に整理する必要があることをご説明しました。

不動産の分け方についても具体的に検討

不動産については、田中さんが現在居住している土地を取得したいという希望がありました。

一方、次男には、すでに自宅があり、その隣接地などを取得してもらう案も過去に話し合われていました。

しかし、長男から、

「自分の取り分がない」

との反発があり、話し合いが止まっていました。

そこで、単純に土地を割り振るだけでなく、

「それぞれの土地の価値はいくらなのか」

「接道状況はどうなっているのか」

「誰がどの土地を取得すれば利用価値が高いのか」

を確認しながら分割方法を検討する必要があることをご説明しました。

土地の取得額に差が生じる場合には、代償金を支払って調整する方法も考えられます。

兄弟への貸付金についても整理

さらに、母親が管理していた金銭の中から、兄弟の一人に合計200万円程度を貸したという事情もありました。

貸付けを示す書面も残っていました。

このような貸付金については、誰のお金から貸したのか、返済状況はどうなっているのかを確認する必要があります。

また、長期間放置すると時効が問題になる可能性もあるため、書面や返済の有無を早めに整理しておくことをご案内しました。

結果

今回の相談によって、田中さんは、

「今ある不動産と預貯金を3等分すれば終わり」

という単純な問題ではないことを改めて確認しました。

父親の土地売却代金については、その後どのように管理され、母親の生活費や介護費として使われたのかを整理する必要があります。

また、田中さん側が長年行ってきた介護についても、

「大変だった」

というだけではなく、時期や内容を具体的に示すことが重要です。

そこで今後は、

父母の病歴と介護状況、要介護認定の時期、入院や施設入居の時期、介護や生活のために支払った費用、土地売却代金や定期預金の流れ、兄弟への貸付金

などを年表や資料にまとめることになりました。

その資料をもとに、他の兄弟へ、

「どのような介護をしてきたのか」

「財産がどのように使われたのか」

を具体的に説明したうえで、遺産分割協議を進める方針となりました。

田中さんとしても、兄弟の財産を奪いたいわけではなく、

「自分たちが長年してきた介護や支援をきちんと理解したうえで話し合ってほしい」

という希望でした。

そのため、まず事実関係を整理し、感情的な対立を避けながら交渉を進めることが重要であることを確認しました。

弁護士所感

長期間にわたり親の介護をしてきた方から、

「兄弟は何もしてこなかったのに、相続になったら同じ取り分を要求してきた」

というご相談を受けることがあります。

お気持ちとして納得しにくいのは当然ですが、遺産分割では、

「自分はこれだけ大変だった」

という主張だけでは、十分に評価してもらえない場合があります。

特に寄与分を主張する場合には、

いつ、どの程度の介護を行ったのかを具体的な資料で示すこと

が重要です。

要介護認定の資料、病院や施設の記録、領収書、通帳、介護サービス利用記録などが残っていれば、有力な資料になります。

また、親のお金を管理していた方は、

「使い込みをしたのではないか」

と疑われやすい立場でもあります。

そのため、親の生活費や介護費として使ったのであれば、その支出をできるだけ整理しておくことが重要です。

通帳から多額の出金がある場合でも、その使途を説明できれば、兄弟間の不信感を軽減できる可能性があります。

今回のように、不動産、預貯金、生前の土地売却代金、介護、貸付金など複数の問題が重なっている場合には、一つずつ事実を整理してから遺産分割協議を行うことが、円満解決への近道です。

早い段階で専門家に相談し、

「何が遺産なのか」

「何を証拠として残すべきなのか」

「介護負担をどのように主張すればよいのか」

を整理しておくことをおすすめします。

おわりに:お気軽にご相談ください

親の介護を長年担ってきた方にとって、相続の場面でその負担が十分に理解されないことは、大きなストレスになります。

また、親の預貯金を管理していた場合には、兄弟から「使い込んだのではないか」と疑われることもあります。

みとみらい法律事務所では、水戸市、ひたちなか市、那珂市、東海村などを中心に、遺産分割協議、寄与分、遺産の範囲、預貯金の使途をめぐる相続問題などに対応しています。

「長年介護したことを遺産分割で考慮してほしい」

「昔の土地売却代金の行方を兄弟から問題にされている」

「親の預金を管理していたため使い込みを疑われている」

といった場合も、まずはお気軽にご相談ください。

 

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