【相談事例】疎遠な相続人がいる相続手続
- 2026.10.13
兄が亡くなり、預貯金や不動産など多額の遺産が残されました。
しかし、相続人となる子どものうち1人とは約40年間連絡がなく、どのように相続手続を進めればよいか分からない状態でした。
本件では、相続人の範囲や遺産の扱いを整理し、今後の手続方法をご説明しました。
依頼者の属性
氏名:鈴木さん(仮名)
住所:日立市
性別:男性
年齢:非公表
争点
相続人調査
相続人への連絡
所在不明
遺産分割協議
遺産の範囲
分割方法
ご相談の背景
鈴木さんから、亡くなったお兄様の相続についてご相談がありました。
お兄様には、過去の婚姻関係から2人の子どもがいました。
そのうち1人とは現在も連絡を取っていましたが、もう1人とは約40年間会っておらず、ほとんど交流がない状態でした。
お兄様は生前、その疎遠になっている子どもにも多少の財産を残したいという話をしていたそうですが、具体的な遺言などを作成する前に亡くなってしまいました。
お兄様の財産としては、定期預金約3000万円、普通預金約1300万円のほか、自宅の土地建物などがありました。
さらに、お兄様は会社経営にも関わっていたようで、会社の株式や配当金などが存在する可能性もありました。
しかし、相談時点では会社関係の資料について十分な確認ができておらず、正確な財産内容までは分かっていませんでした。
また、お兄様と生活していた女性がいましたが、法律上の婚姻関係はありませんでした。
鈴木さんとしては、
「自分が代わりに相続手続を進められないか」
「子ども2人が家をいらないと言った場合、自分が相続できないか」
「預貯金だけでも子ども2人に公平に分けられないか」
と考え、相談に来られました。
さらに、同じ日にお姉様も亡くなっていたため、お姉様の相続も別途発生しており、複数の相続が同時に重なっている状況でした。
弁護士の対応
まず重要なのは、誰に相続権があるのかを正確に整理することです。
今回、お兄様には子どもが2人いるため、基本的にはその2人が相続人となります。
兄弟である鈴木さんや、法律上の婚姻関係にない内縁の方が、当然に相続人となるわけではありません。
そのため、鈴木さん自身が
「相続人として財産を取得する」
という形で手続を進めることはできないことをご説明しました。
相続手続は相続人本人から依頼する必要がある
鈴木さんは、これまで複数の司法書士や税理士にも相談していましたが、
「あなた自身は相続人ではないので、その立場では手続できない」
と言われていました。
この点についても、相続手続を専門家へ依頼するのであれば、原則として相続人である2人の子どもから依頼してもらう必要があります。
そこで、現在連絡を取ることができる子どもに対し、相続手続を専門家へ依頼するよう伝える方法をご案内しました。
疎遠になっているもう1人の子どもについては、戸籍等をたどることで現在の住所を確認し、相続人として連絡を取っていく方法が考えられます。
預貯金だけでなく不動産も遺産分割の対象
鈴木さんは、
「預貯金を2人で半分ずつに分ければ、それで終わりなのではないか」
とも考えていました。
しかし、遺産には預貯金だけでなく、不動産も含まれます。
そのため、土地建物についても相続人2人の間で、誰が取得するのか、売却するのかなどを決める必要があります。
相続人が「家はいらない」と考えている場合でも、何もしなければ不動産の問題が消えるわけではありません。
例えば、不動産を売却して、その売却代金を分ける方法もあります。
また、一定の場合には他の人に譲渡する方法も考えられますが、その場合には贈与税など税務上の問題が生じる可能性があるため、慎重な検討が必要です。
会社の株式も確認が必要
お兄様は会社を経営していたようで、会社から配当金のような入金もあったとのことでした。
そのため、お兄様が会社の株式を所有していたのであれば、その株式も相続財産となる可能性があります。
株式を誰が相続するのかが決まらないままでは、株主総会など会社運営に支障が生じる可能性があります。
そこで、会社の決算書、株主名簿、過去の税務申告書などを確認し、株式の有無や内容についても調査する必要があることをご説明しました。
会社については相続だけでなく、今後の税務申告や会社運営も関係するため、必要に応じて税理士などと連携して整理していく必要があります。
内縁の方が管理している財産についても確認
相談の中では、お兄様が亡くなった後、預金証書などの財産資料がすぐには出てこなかったという話もありました。
鈴木さんとしては、お兄様と生活していた方が財産を十分に開示していないのではないかという不信感を持っていました。
相続手続では、まず被相続人にどのような財産があったのかを確認することが重要です。
預貯金については、相続人から金融機関へ照会を行うことで、被相続人名義の口座や残高を確認できる場合があります。
また、不動産についても固定資産税関係の資料などを確認することで把握していくことができます。
会社株式やその他の金融資産も含め、相続人側で財産調査をしたうえで、遺産の全体像を明らかにする必要があります。
同じ日に亡くなった姉の相続も整理
今回特徴的だったのは、お兄様だけでなく、鈴木さんのお姉様も同じ日に亡くなっていたことです。
しかも、お姉様が先に亡くなり、その後にお兄様が亡くなったという前後関係がありました。
死亡した順番によっては、お姉様の遺産についてお兄様がいったん相続人となり、その後、お兄様が取得した相続分をお兄様の子どもたちがさらに相続することがあります。
このようなケースでは、一つの相続だけを見るのではなく、
「誰が何時点で相続人だったのか」
を順番に整理する必要があります。
そのため、お姉様の相続についても戸籍や死亡時刻などを確認しながら別途整理する必要があることをご説明しました。
結果
今回の相談によって、鈴木さんは、自分自身が兄の相続人ではないため、鈴木さんの判断だけで預貯金や不動産を処理することはできないことを理解されました。
一方で、お兄様の2人の子どもが相続人となるため、相続人本人が専門家に依頼すれば、預貯金、不動産、会社株式などの財産を調査し、遺産分割を進めることができます。
特に、長期間連絡を取っていない相続人についても、戸籍などから所在を調査して連絡を取る方法があることが分かりました。
また、
「預貯金だけを2人で分ければよい」
という問題ではなく、不動産や会社株式なども含めて遺産全体を確認する必要があることも明確になりました。
鈴木さんは、まず現在連絡を取ることができる姪に事情を説明し、その姪から専門家へ依頼して相続手続を進めてもらう方向で整理することになりました。
複雑に感じていた相続関係について、
「誰が手続をすべきなのか」
「誰が財産を取得する権利を持っているのか」
が明確になったことで、今後の進め方について安心された様子でした。
弁護士所感
相続では、亡くなった方の兄弟や親族が実際の手続を進めているケースが少なくありません。
しかし、
「葬儀をした」
「長年面倒を見てきた」
「財産の内容を一番よく知っている」
という事情があっても、その方が法律上の相続人とは限りません。
今回のように子どもがいる場合には、原則として子どもが相続人となります。
そのため、親族が善意で相続手続を進めようとしても、相続人本人からの依頼がなければ専門家が正式に手続を進められない場合があります。
また、相続人の一人と何十年も連絡が取れていないからといって、その相続人を無視して遺産分割をすることはできません。
戸籍などを調査して現在の所在を確認し、相続人全員を手続に参加させる必要があります。
さらに、被相続人が会社を経営していた場合には、預貯金や自宅だけでなく、会社の株式も重要な相続財産になることがあります。
相続手続が遅れることで会社の経営にも影響が出る場合があるため、早めの確認が重要です。
今回のように、
「相続人と長期間連絡が取れていない」
「財産がどこまであるのか分からない」
「会社の株式まで相続に関係している」
「短期間に複数の親族が亡くなった」
という場合は、相続関係が急速に複雑になります。
早い段階で専門家に相談し、相続人調査と財産調査を行うことで、誰が何をすべきなのかを整理することができます。
おわりに:お気軽にご相談ください
相続人の中に長年疎遠になっている方がいる場合や、亡くなった方の財産内容が分からない場合には、相続手続をどこから始めればよいのか分からなくなることがあります。
みとみらい法律事務所では、水戸市、ひたちなか市、那珂市、東海村などを中心に、相続人調査、相続人への連絡、遺産分割協議、遺産の調査などの相続問題に対応しています。
「何十年も会っていない相続人がいる」
「預貯金や不動産のほかに会社の財産もある」
「自分が相続人なのかどうか分からない」
といった場合も、一人で判断せず、お気軽にご相談ください。























