遺言書は無効?認知症を理由に争われたケースと対応のポイント
- 2026.05.05
依頼者情報の整理
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相談者
- 小林さん(仮名) ひたちなか市 60代
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被相続人
- 父
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相続人
- 母
- 子3名(相談者と兄弟2人)
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財産内容
- 不動産(土地・建物)
- 預貯金
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状況
- 自筆証書遺言あり(法務局保管)
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内容
- 特定の相続人(母)へほぼ全財産を相続させる内容
- 他の相続人側から「遺言無効」の主張あり
- 弁護士から通知書が届く(遺言無効または遺留分請求)
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相談者の背景事情(モノローグ)
「父が亡くなり、遺言書の内容に従って相続手続きを進めようとしていたところ、私以外の兄弟側の弁護士から『遺言は無効ではないか』という通知が届きました。
理由は、父が遺言を書いた当時、認知症だった可能性があるというものです。
実際には、父は日常会話もできていましたし、外出や手続きも自分で行っていました。ただ、介護認定は受けており、病院にも通っていました。
この遺言が有効なのか、それとも無効になってしまうのか、また今後どのように対応すべきか分からず相談しました。」
質問と回答(Q&A形式)
質問①
「認知症と診断されていると、遺言書は無効になるのでしょうか?」
回答
必ずしも無効にはなりません。
重要なのは「遺言作成時に遺言能力(判断能力)があったかどうか」です。
認知症であっても軽度であれば有効と判断されることもあります。一方で、重度で意思判断ができない状態であれば無効となる可能性があります。
そのため、医療記録や介護認定資料などをもとに、当時の具体的な判断能力が検討されます。
質問②
「このように相手方弁護士から遺言が無効だと内容証明郵便が送られてきた場合、まず何をすればよいですか?」
回答
まずは相手方に対し、「弁護士に相談して対応するので時間をほしい」と回答することが重要です。
そのうえで、遺言作成前後の医療記録、介護認定資料、診断書などの客観的資料を収集します。特に、遺言作成時期に近い時点の資料が重要であり、裁判になった場合の判断材料となります。
これらを総合的に考慮して、相手方弁護士に回答しましょう。
質問③
「日常会話ができていたことは、有効性の証拠になりますか?」
回答
一定の参考にはなりますが、それだけで十分とはいえません。
裁判では、医師の診断内容や認知機能検査(長谷川式スケールなど)、介護記録などの客観的資料が重視されます。
日常会話ができていたとしても、財産の内容や分配を理解できる能力があったかどうかがポイントになります。
アドバイスの要点整理
- 認知症=遺言無効ではない
- 判断基準は「遺言能力の有無」
- 医療記録・介護認定資料が重要な証拠
- 遺言作成時期に近い資料を優先的に収集
- まずは相手方に「検討中」と回答して時間を確保
- 感覚的な証言より客観的資料が重視される
- 遺言無効の場合は遺産分割協議へ移行
弁護士の所感(結論)
本件は、「認知症と遺言能力」をめぐる典型的な相続紛争です。近年、高齢化に伴い同様の争いは増加しています。特に、自筆証書遺言で作成する場合には、遺言能力の有無が争いとなることがあります。
重要なのは、「認知症の有無」ではなく「その時点で遺言の内容を理解できたか」という点です。軽度の認知症であれば有効と判断されるケースも多く、単純に診断名だけで結論が出るものではありません。
また、本件のように弁護士から通知が届いた段階では、慌てて結論を出す必要はありません。まずは冷静に資料を収集し、法的な見通しを立てることが重要です。
特に、介護認定記録や医療記録は、客観的な証拠として非常に重要な役割を果たします。
本事例からの教訓は、「遺言の有効性は事前準備で大きく左右される」という点です。将来的な紛争を防ぐためには、公正証書遺言の活用や医師の関与なども検討すべきでしょう。
相続でトラブルが発生した場合は、早期に専門家へ相談することが解決への近道となります。























