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遺言書の有効性を巡る争いと遺留分請求への対応

2026.05.05

依頼者情報の整理

  • 相談者

  • 鈴木さん(配偶者:仮名)
  • 年齢

  • 80歳前後
  • 被相続人

  • 夫(3ヵ月前に死亡)
  • 相続人

  • 鈴木さん 妻(相談者)
    • 2
  • 財産内容

  • 不動産(複数、固定資産評価で約1億円)
    • 預貯金(約5000万円)
    • 総額:約15000万円
  • 現在の状況

  • 遺言書により妻が財産を取得
    • 子らが「遺言無効」を主張
    • 内容証明が届き、紛争化
    • 預金は凍結状態
    • 相続税の支払期限が迫っている

 

相談者の背景事情(モノローグ)

「主人が亡くなる前に、法務局で遺言書を作って、財産はほとんど私に残してくれる内容でした。それなのに、子どもたちが『遺言は無効だ』と言ってきて、弁護士までつけて争ってきています。

確かに主人は高齢でしたが、法務局にも一緒に行って、きちんと話もできていました。それなのに『判断能力がなかった』と言われてしまい、不安でいっぱいです。

預金も止められてしまい、生活費の支払いも心配ですし、相続税の期限も迫っています。このまま裁判になるのか、どれくらいお金がかかるのかも分からず、どうしたらいいのか分からなくて相談に来ました。」

 

質問と回答(Q&A形式)

質問

「遺言書は法務局で作成しましたが、それでも無効になることはあるのでしょうか?」

回答

形式的に有効な遺言書であっても、「作成当時に遺言者の判断能力がなかった」と認められる場合には無効となる可能性があります。

今回のように相手方が認知症などを理由に無効を主張している場合、医療記録や当時の状況、場合によっては鑑定などにより判断能力の有無が争点となります。

ただし、法務局で自筆証書遺言を預かる際にはご本人が法務局へ出向き、手続をしなければなりません。

そのような手続を自ら行うことができたので、法務局で保管してくれたと考えられます。つまり、まったく話しがわからないのではなく、ある程度の判断力は有していたと考えられます。

そのため、認知症イコール直ちに無効とされるわけではありません。最終的には裁判所の判断によります。

 

質問

「相手が遺言無効を主張している場合、預金が引き出せないのはなぜですか?」

回答

金融機関は、相続について争いがある場合、払い戻しに応じないのが通常です。

遺言の有効性が争われている状況で預金を払い戻すと、後に遺言が無効と判断された場合に責任を問われる可能性があるためです。

そのため、預金を動かすには、当事者間の合意か、裁判所の判断(遺言有効の判決等)が必要となることが一般的です。

 

質問

「仮に遺言書が有効でも、子どもに財産を渡さなければならないのでしょうか?」

回答

はい、遺言が有効であっても、子どもには「遺留分」という最低限の取り分が認められています。

本件のように配偶者と子2人の場合、子の遺留分は法定相続分の半分となり、全体として一定割合の金銭を支払う必要があります。

この場合はお子さん2人なので、遺留分割合はお一人あたり41となります。遺留分は現物ではなく金銭での請求となるため、不動産しかない場合には売却や資金準備が必要になることもあります。

 

アドバイスの要点整理

  • 遺言書は形式だけでなく「判断能力」が争点になる
  • 医療記録や鑑定が重要な証拠となる可能性あり
  • 相続争い中は預金が凍結されることが多い
  • 遺言が有効でも遺留分の支払い義務が発生する
  • 不動産中心の相続では「現金不足」が問題になりやすい
  • 相続税は遺言の有効・無効に関わらず発生する
  • 早期に方針を決めないと、裁判・費用負担が拡大する

 

弁護士の所感(結論)

本件は、「遺言書の有効性」と「遺留分請求」が同時に問題となる典型的な相続紛争です。特に高齢者の遺言では、判断能力の有無が争点となりやすく、医療記録や当時の状況の立証が重要になります。

また、遺言が有効であっても、遺留分の問題は避けられず、多額の金銭支払いが必要となる可能性があります。財産の大半が不動産である場合、換価(売却)を含めた対応を検討せざるを得ないケースも少なくありません。

さらに、本件のように預金が凍結されると、相続税や維持費の支払いにも支障が生じ、状況が一層複雑化します。

このような事案では、感情的対立が深まる前に、法的な見通しを踏まえた戦略的対応が不可欠です。特に遺言無効訴訟は専門性が高く、個人での対応は極めて困難です。

本事例からの教訓は、「遺言書があっても安心ではない」という点と、「早期に専門家へ依頼することの重要性」です。

相続でお困りの方は、問題が深刻化する前に、弁護士への相談をおすすめします。

 

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