知らない前妻の子から遺留分請求…支払いを拒否できるのか?
- 2026.05.05
依頼者情報の整理
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相談者
- 妻(仮名:鈴木様) 水戸市
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被相続人
- 夫(平成29年死亡)
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家族関係
- 相談者(後妻)
- 夫の前妻との子(複数、そのうち1名から請求)
- 相談者と夫の間に子どもなし
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財産内容
- 主に不動産
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状況
- 公正証書遺言あり(相談者がすべてを相続)
- 前妻の子から遺留分侵害額請求(約100万円超)
- 内容証明および支払請求あり
- 面識のない相手からの請求に強い抵抗感
相談者の背景事情(モノローグ)
「主人が亡くなり、遺言書で私が財産を相続することになりました。ところが、突然、前妻との子どもだという方から遺留分の請求が届いたんです。
正直、その方とは一度も会ったこともありませんし、本当に主人の子どもなのかも分かりません。それなのに、『お金を払ってください』と言われても、納得がいかないんです。
しかも金額まで提示されていて、振り込めと言われています。気持ちとしてはとても受け入れられないのですが、法律上はどうなのか、このまま拒否できるのか不安で相談に来ました。」
質問と回答(Q&A形式)
質問①
「会ったこともない前妻の子に対して、本当にお金を支払う必要があるのでしょうか?」
回答
戸籍上、被相続人の子と認められている場合、その方には法的に相続権が、遺言書がある場合には遺留分が認められます。
お気持ちは理解できますが、感情的な事情や面識の有無は、原則として法律判断には影響しません。
そのため、遺留分侵害額請求が適法に行われている場合、支払い義務が生じます。
拒否した場合は、最終的に裁判で請求が認められる可能性が高く、この段階で拒否しても、結果は大きく変わらないでしょう。
質問②
「本当に夫の子どもか疑わしいのですが、それでも支払わなければいけませんか?」
回答
戸籍に親子関係が記載されている場合、法律上は親子と推定されます。
これを覆すには「親子関係不存在確認訴訟」などを行う必要がありますが、DNA鑑定などの強い証拠が求められ、実務上ハードルは非常に高いです。
また、費用や時間もかかるため、現実的には争わず対応するケースが多いです。
質問③
「提示された金額はそのまま支払うしかないのでしょうか?」
回答
基本的には、遺産総額に対する法定の遺留分割合に基づいて算定されるため、大きく減額することは難しいです。
ただし、算定の基礎となる財産評価(特に不動産評価)については検証の余地があります。
固定資産評価額や時価の違いにより若干の調整が可能な場合もありますが、大幅な減額は期待しにくいのが実情です。
アドバイスの要点整理
- 戸籍上の子には遺留分が認められる
- 面識の有無や感情は法的判断に影響しない
- 親子関係の否定は訴訟が必要でハードルが高い
- 遺留分は法定割合で決まり、大幅な減額は困難
- 支払いを拒否すると裁判となり、結論は変わらない可能性が高い
- 遺言書があっても遺留分請求は避けられない
弁護士の所感(結論)
本件は、「感情」と「法律」の乖離が顕著に現れる典型的な遺留分トラブルです。相談者のように、全く面識のない相手から突然金銭請求を受けるケースでは、強い違和感や不信感を抱くのは当然といえます。
しかし、相続においては戸籍関係が極めて重視され、親子関係が認められる限り、遺言書があっても遺留分請求は正当な権利として扱われます。そのため、感情的な納得がいかないとしても、法的には支払いを避けることは困難です。
一方で、本件のように遺言書があったことで、取得割合は大きく守られており、結果的には負担が軽減されている点も重要です。遺言がなければ、さらに大きな割合を分割する必要があった可能性があります。
本事例から学ぶべきポイントは、「遺言書を作成しても遺留分対策までは別途必要である」という点です。特に前婚の子がいる場合などは、事前の対策が不可欠です。
同様の問題でお悩みの方は、早期に専門家へご相談ください。























