「現金が欲しいのに不動産と株ばかり」相続でよくある“分けにくい財産”の対応
- 2026.05.05
依頼者情報の整理
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相談者
- 鈴木さん(仮名) 50代 ひたちなか市
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被相続人
- 父(過去に死亡)
- 母(最近死亡)
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相続人
- 相談者 鈴木さん
- 兄
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財産内容
- 非上場会社の株式(大半) 父が経営
- 不動産(自宅・土地)
- 会社への貸付金(約2,000万円規模)
- 預金(少額:約300万円程度)
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状況
- 遺言書なし
- 相続放棄は期間経過により不可
- 兄が会社経営を継続
- 相続税の支払いが控えている
相談者の背景事情(モノローグ)
「母が亡くなって相続が発生しました。父のときの相続も絡んでいて、財産の中身を調べてみたら、ほとんどが父の経営していた会社の株や不動産ばかりで、現金がほとんどありませんでした。
正直、私は現金で受け取りたいと思っています。というのも、母のときに兄との関係がかなり悪く、通帳も見せてもらえないような状況が続いていたからです。
会社は一見お金がありそうに見えたのですが、実際には利益も出ておらず、借入も多いようで、すぐにお金を出せる状況ではないと聞きました。
このままだと、相続税だけがかかって、実際には現金が手に入らないのではないかと不安です。どうすれば少しでも有利に、できれば現金で受け取れるのか知りたくて相談しました。」
質問と回答(Q&A形式)
質問①
「相続財産が株や不動産ばかりの場合、現金でもらうことはできますか?」
回答
一般的は相手方が株や不動産を取得し、その代わりにこちらに代償金を支払う分割は可能です。
しかし、相手方の資産の内容次第で、現実的には難しいケースもあります。相手がこちらへ現金で取得するには、他の相続人が代償金として支払う資金を持っている必要があります。
しかし、相手方に十分な資金がない場合一括での支払いは困難です。
そのような場合には、こちらが現物(株式や不動産)を取得する、不動産を第三者に売却し、その代金を分ける、または分割払いによる代償金支払いが検討されることが一般的です。
質問②
「では、会社の財産(不動産や現金)を直接分けてもらうことはできますか?」
回答
原則としてできません。
会社の財産は会社のものであり、今回の相続の対象となるのは「株式」です。
したがって、会社の不動産や預金を直接分けることはできず、株式を取得することで間接的に会社の経営に関与する形になります。
会社の財産は遺産分割で分ける対象ではないのです。
ただし、お母さんが会社への貸付金を有している場合は、その返済を求めることは可能ですが、会社の経営状況、資金繰り次第では会社が支払えないということもあり得ます。
質問③
「相続税だけが発生して、現金が手に入らないことはありますか?」
回答
はい、実務上よくある問題です。
相続税は“評価額”を基準に課税されるため、不動産や株式が多い場合でも課税対象となります。
一方で、それらをすぐに現金化できるとは限らないため、「納税資金が不足する」という事態が生じます。このような場合、不動産の売却や分割払い、場合によっては納税猶予制度の検討が必要となります。
アドバイスの要点整理
- 非上場株式や不動産は「分けにくい財産」の典型
- 現金取得には相手方の資金力が大きく影響する
- 会社財産は直接分割できず、株式での取得が原則
- 貸付金は回収可能だが、会社の資金状況に依存する
- 相続税は現金の有無に関係なく発生する
- 納税資金確保のため、不動産売却が現実的選択となることが多い
- 感情対立がある場合、分割払いは回収リスクが高い
弁護士の所感(結論)
本件は、「財産はあるが現金がない」という、いわゆる“資産リッチ・キャッシュプア”型の典型的な相続問題です。特に非上場会社の株式や不動産が中心の場合、評価額と実際の流動性に大きなギャップが生じます。
その結果、相続税の負担だけが先行し、実際の分配が進まないという事態に陥りやすくなります。本件でも、現金での取得は難しく、現実的には「不動産を取得して売却する」か、「株式を取得して経営に関与する」かの選択を迫られる状況です。
また、相続放棄の期限経過後であることから、相続税の支払いを免れるために相続放棄をすることができません。
この事例から学ぶべきポイントは、「相続財産の中身を早期に把握すること」と「納税資金まで見据えた分割戦略の重要性」です。
相続では、“何をもらうか”だけでなく、“どう現金化するか”まで考える必要があります。同様の問題でお悩みの方は、早期に専門家へご相談ください。























