異母兄弟からの手紙と相続放棄の事例
- 2025.01.15
依頼者情報の整理
氏名: 齋藤さん(仮称: Aさん)
住所: 茨城県水戸市(仮定)
家族関係: 被相続人は実父の明雄さん、離婚後に結婚して生まれた異母兄弟。相続人は依頼者Aさん、弟、および異母兄弟。
相談者の背景事情
「実父が20年以上前に亡くなり、最近後妻さんも亡くなった。異母兄弟から突然に相続に関する手紙が届きました。実父名義で登記されている不動産の名義変更を進めるためのものでしたが、いままでまったく面識がない相手との連絡を避けたい気持ちもあり、今後どう対応すべきか困っています。」
質問と回答
- 質問: 「父が亡くなったのは実は20年以上前です。今回、手紙でそれを知らされました。今から相続放棄できますか?」
回答: 「相続放棄の期限は、原則として相続開始を知ってから3ヶ月以内です。今回、異母兄弟からの手紙で、亡くなったのを知ったのは一昨日とのことなので、まだ、間に合います。」
- 質問: 「相続財産がわからない場合はどうしたらいいですか?」
回答: 「一般的に、不動産と預貯金があることが多いので、不動産を調査してみましょう。不動産については、市役所の税務課で固定資産評価証明書を取得し、その評価額を見て、物件の所在と価値を把握します。近隣の不動産業者におおよその売買価格を聞いてみてもよいでしょう。それと、預貯金は一般的には住所の近くの金融機関に預けることが多いので、死亡時の住所地の近くの金融機関に確認してみるとよいでしょう。いずれにしても、市役所も、金融機関も、亡くなったお父さんと窓口に来た人との関係、相続人かどうかを確認します。そのためにまずは被相続人の戸籍謄本と附票を取得しましょう。まず、市民課で戸籍謄本等をとりましょう。そして、その後、市役所の税務課で固定資産評価証明書を取得し、物件の価値を把握するのが一般的です。負債も気になりますが、登記簿謄本に抵当権がついていないか、借金していないかを確認してみてはいかがでしょうか。その他の負債は、今回は、亡くなってから20年も経過しているので、負債は、後妻さんや異母兄弟が支払っていたとも考えられます。いずれにしても、きちんとやりたいのであれば、相続放棄するかどうかを判断するために財産調査をしましょう。」
- 質問: 「相続放棄せずに放置するとどうなりますか?」
回答: 「相続放棄しない場合、相続人として負担義務が発生します。遺産を分割するために、遺産分割協議をしないといけません。不動産を相続してしまうと、不動産の固定資産税や管理が発生する可能性もあります。茨城県だと、不動産が処分できるところもありますが、少し田舎へ行くと、不動産の処分が難しくなります。買ってくれる人がいません。そのような不動産を相続してしまうと、その後の管理が大変です。国庫帰属制度がありますが、引き取ってもらうとしてもかなりの費用が必要となります。そのようなことからすると、買ってもらえそうにない不動産がある場合には、相続放棄してしまった方がよいのではないでしょうか。」
アドバイスの要点を整理
相続開始の事実を知った日から3ヶ月以内なら、相続放棄を検討する。
不動産の正確な情報を市役所などで確認する。
財産と負債のバランスを見て相続するか放棄するか決める。
相続放棄の手続きには裁判所への申請が必要。
弁護士所感
今回の事例は、長期間放置された不動産相続の典型例です。不動産の場合、財産価値の有無にかかわらず、固定資産税などの負担が発生し続けるため、早急な判断をおすすめします。特に相続放棄の期限を過ぎた場合は、原則的に相続放棄ができません。負担の多い不動産を引き受けることになり、大変です。問題が複雑化する前に、専門家への相談を早めに行うことが円滑な解決への第一歩です。