父の遺産相続におけるトラブルと解決の道筋
- 2025.01.15
相談者情報
氏名: 鈴木純子さん(仮名)
住所: 茨城県ひたちなか市(仮定)
年齢: 60代
家族関係: 被相続人は父。相続人は純子さんと弟。
相談者の背景事情
「父が亡くなり、弟との間で遺産相続問題が発生しました。父の財産にはアパート、不動産、預貯金が含まれていましたが、父の死亡後に弟が不動産の賃料収入を独占し、また、死亡後に預金も勝手に引き出していたことが判明しました。さらに、生前に父が作った車庫も弟が使用しており、父の意向が反映されていない状況です。父の願いは『仲良く分けて』というものでしたが、弟はまったく私のことを無視して、「すべての不動産は俺がもらう」と言っています。」
質問と回答
- 質問: 「弟が父の預金を勝手に引き出していました。取り戻すことはできますか?」
回答: 「生前の払い戻しについて、弟さんが不正に引き出したと認定されれば、相続財産に組み戻すことが可能です。こちらは損害賠償または不当利得と考えます。また、弟さんがもらったという場合も、持ち戻しをして相続財産に加えることが可能と考えます。これは生前贈与と考えて持ち戻すという考えです。相続開始後は、相続人全員の同意がなければ預貯金は払い戻すことができません。交渉や調停などを通じて、遺産に戻すように要求することができると思います。なお、交渉や調停で戻さない場合は、地方裁判所で、払い戻した分の半分、すなわち淳子さんの分に相当する分を請求することができます。」
- 質問: 「父が持っていたアパートの賃料収入も弟が受け取っています。どうすればいいですか?」
回答: 「厳密には、相続発生後のアパートの賃料は相続財産ではなく、相続財産から発生する法定果実といわれるものです。こちらについては、相続財産と同様に分割していくことになります。アパートの賃料収入の記録を確認し、弟さんに相続分の半分を請求していくことになりますが、遺産分割と一緒に進めるのがよいと思います。」
- 質問: 「父が建てた車庫が弟の物になっています。どう主張すればよいでしょうか?」
回答: 「相続財産に含まれるかどうかが問題です。車庫が遺産に含まれるかどうかは、まずその車庫の登記がどのようになっているかによります。登記が弟さん名義であれば、弟さんに建築資金を贈与していたということとなり、その建築資金の贈与部分が特別受益となる可能性があります。その場合は、原則として、贈与の金額が持ち戻しされて、遺産に加えられることになります。登記簿謄本がない場合は、建設の際に、誰が発注者であり、建築主であるのか等の証拠をもとに所有者を判断します。これによってお父さんの建物となれば遺産として分割していくことになりますし、そうでない場合は、特別受益として持ち戻されることになると考えます。」
アドバイスの要点を整理
交渉しても進展しないようであれば、家庭裁判所へ遺産分割調停の申立てを行うとよいでしょう。
アパートがあるので、賃料収入がかなりあるように思いますので、賃料収入を調査し、不動産鑑定士に鑑定評価額を尋ねてもよいでしょう。
預金引き出しの履歴を確認して整理しましょう。
弁護士所感
この事例では、相続財産の範囲に争いがあります。また、アパートの将来の賃料収入を反映した評価にすべきか検討が必要です。家族間の信頼が損なわれた場合、感情的な対立を避けるためにも、早期に専門家へ相談し、法的手続きに進むべきです。