亡き親と同居していた長男(長女)との相続トラブルについて
「親の通帳は見せる必要がない、最終の預金残高だけわかればそれでいいだろう」と言って財産を開示してくれない
「長男だから遺産を多めにもらえるのは当然なんだ」
など親と同居していた長男(長女)から言われることがあります。
親と同居していた長男(長女)が「親の面倒をみてきたのは自分だから」「自分は跡継ぎだから」などと言って、他の兄弟姉妹に対し、亡き親の財産を教えないケースや、多めに財産を取得しても当然だと主張するケースは少なくありません。
このような主張をする長男(長女)以外の相続人が、相続の話し合いをするために、まずは亡き親の財産の内容を明らかにしてほしいと頼んでも、資料を出してくれず、話し合いの糸口すら見えないこともあります。
そのような対応が続けば、「なぜ教えてくれないのだろう」「隠す理由があるのではないか」「親の財産を使ってしまったのではないか」など疑心暗鬼となり、相続人間の感情的な対立が深まり、激しい相続争いを招くことになります。
目次
よくある長男(長女)との意見の食い違いの例
【長女】
何年も病気の母親の世話をしながら苦労をしてきたのに、何もしない妹と自分が同じ相続分なんて納得できない。
【妹】
実家の姉は、母親と同居をしていたから、その分住居費などの消費が抑えられたはず。 母親の面倒を見たからといって、相続分が多くなるのはおかしい。
【長男】
(昔あった家督相続のように)家を継ぐ長男が全ての遺産を相続するべきだ。
【他の兄弟】
現在の法律では均分相続が基本なので兄弟とも平等に分けるべきだ。
相続の話し合いをするためには、財産内容を知る必要があります。まずは丁寧に、通帳等の資料の開示をお願いしてください。
それでも、言っても言を左右に資料を出してくれない場合もあるでしょう。その場合は、自らが相続財産の調査を行う必要があります。このような可能性がある場合も、弁護士に相続財産の調査をどのように進めるべきかご相談されることをお勧めします。例えば、親と同居していた長男(長女)が、親の預貯金を使い込んでしまっており、その発覚を恐れて、通帳等を開示しない可能性などもあり、資料の提出を拒まれたならば、適切に調査を実施する必要があります。
権利を主張する長男(長女)への対策
長子相続が当然だと主張している長男側に対して
現在の民法では、家督相続は採用されておらず、子は平等に相続をすることになっています。しかし、代々続いている家や、農家、資産家などでは、先祖から引き継いだ財産を長子に相続させるという発想が根強く残っており、それが紛争の原因となることが珍しくありません。
法的観点からすると、長男であっても、他の兄弟姉妹と平等に相続することになります。ただ、家族間のことでもありますので、すべてを法律で割り切ってしまっていいのかは十分に考えなければなりません。私どもの経験からすると、このような場合に単純に法律で割り切ってしまうと、その後、家族の縁は切れ、円満につきあっていくことはできなくなります。それが本当にあなたの望むべきことなのかをいちど考えていただきたいと思います。長子相続が当然だと主張してくる側にも、言い分はあります。それは財産が個人のものではなく、ご先祖様が作ってくれた一族の財産だという意識です。
相続人間の相続に対する考えが食い違い、話し合いが進まない場合には、弁護士に相談をすることをお勧めします。遺産分割調停などを利用することが結果的に迅速な解決につながります。親と同居していた兄弟姉妹が「寄与分がある」と主張している
親が住んでいた家に同居している兄弟姉妹が、「親の介護をしていた」、「生活費を親に渡していた」ということを理由に、寄与分の主張する場合があります。
介護をしたという「貢献」や生活費などの「経済的援助」があったという主張がなされた場合には、それらを裏付けるための証拠(例えば生活費の支払いがわかる領収書や通帳等)を出してもらうことをお勧めします。抽象的な話をしても話し合いは進展しないことが多いです。具体的にどのような介護をしたのか、いくらくらいの経済的援助をしたのかを知ることにより、なるほどと納得できて、相続分を多くしてもよいとお考えになるかもしれません。なお、寄与分の主張があるケースについては、感情的対立が激しくなることが多いです。
そのため、なかなか話し合いが難しい場合があります。このような場合には、時間をかけても解決することはありません。弁護士を通して解決することをお勧めします。
特別受益と寄与分について兄弟姉妹間の相続トラブルを防止するには
では、相続トラブルに発展しないようにするためにはどうすればよいのでしょうか?
遺言書を作成する
遺言書を作成することで、遺言書をもとに相続手続をすることができますから、相続争いを未然に防ぐことができます。しかし、遺言書がなければ、誰が何を相続するか話し合いをしなければなりません。話し合いの際に、自分にとって当然だと思っていたことが、相手にとっては非常識なことだと受け止められることがあり、その結果、ボタンのかけ違いが生じて、相続争いに発展してしまうのです。
遺言書には、遺言者自身の意思で、誰にどのくらいの割合で遺産を与えるか(相続分の指定)、具体的にどの財産を誰にあげるか(遺産分割の指定)を記載することができます。
ただ、遺言書の存在や内容を知らなかった相続人は、その内容に納得できず、遺言書の有効性を疑うケースがあります。
例えば、遺言書によって、相続分よりも多く財産をもらえることになる相続人が、遺言書の作成を強制したのではないかと疑念を抱き、家族間で仲違いをすることも多く見受けられます。このような仲違いを引き起こさないように、遺言書を作成する前に、家族で将来のことについて話し合う機会を持つことが必要と考えます。いわゆる「家族会議」です。これによって、遺言書をきっかけとした仲違いを未然に防ぐことにつながります。
遺言書を作成する場合にも、その遺言書によって思わぬ紛争が発生しないように、事前にリスクを潰しておくことが必要です。そのためには、遺言書作成について専門家に相談することをおすすめします。弁護士であれば、遺言書の書き方だけでなく、法律上の問題点を検討し、その対策について併せて提案することも可能です。
遺言書を作成したい・相続対策をしたい方へ故人の死後、なるべく早めに相続人と相続財産を調べ、全容を把握する
故人が亡くなり、直後に必要な手続や葬儀・法要が終わったら、なるべく早く、相続人が誰かと相続財産が何かをお調べいただき、誰にどのくらい相続財産を分配しないといけないか、すなわち、相続人の調査、相続財産の調査、相続分の試算をしましょう。
相続人の調査は、戸籍謄本を収集していきます。被相続人が産まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等を収集しなければなりません。また、相続財産の調査は、不動産、預貯金、株などの財産内容を把握します。たとえば、不動産については、市役所の税務課に行き、名寄帳や固定資産税の評価証明書を取得する等をしなければなりません。これらの調査は、時間と労力を要します。
調査するための時間がないという方は、弁護士をご利用いただくとよいでしょう。
当事務所の相続人・相続財産サポートについて少しでも「遺産分割協議が進まないな」と感じたら弁護士にご相談いただく
遺産分割協議を進めていく中で、
「遺産分割協議がなかなか進まないな」
「これはまとまりそうにないな」
と感じることがあるかもしれません。
そんな時は、これから先、いったいどうなるのだろうかと不安や心配が膨らんでしまい、場合によっては疑心暗鬼になるものです。
そのようなときは、なるべく早いうちに弁護士にご相談いただくと、見通しをお伝えすることが可能です。弁護士に相談するのは、相手と争うためだけではありません。 弁護士は、数多くの経験がありますので、その経験に基づき、現在の話し合いの状況が最終解決までの全体の中でどのような段階にあるのか、この後、どのような展開が考えられるのか、それに対してどのような対策を取ることができるのかなどのアドバイスをすることができます。 必要があれば、弁護士が交渉の代理人となることも提案させていただきますが、必ず弁護士に依頼しなければならないものでもありません。まずは、ご相談いただき、あなたの希望する解決に導けるようサポートいたします。
初回60分無料相談
当事務所では、相続の相談について、初回60分を無料とさせていただいております。あなたの不安点や疑問点を親身にヒアリングさせていただき、弁護士が相続に関する不安点や疑問点を解消できるようにご提案させていただきます。気になることや不安なことがあれば、ささいなことでもお気軽にご相談ください。