知らないと損! 多数の収益不動産を持つ場合の相続手続きとリスクについて解説します。
収益不動産とは
収益不動産とは、家賃収入(収益)を生む不動産のことです。
たとえば、「アパート(共同住宅)」「区分マンション1室」「区分マンション1棟」「戸建て」「借地」など、賃貸借によって賃料収入を得られる不動産のことです。収益不動産がある場合の相続手続は、基本的には不動産の相続手続と同じです。
収益不動産の特徴
遺産の中に収益不動産があると、そこから毎月一定の賃料収入が得られるため、普通の居住用不動産とは価値も異なます。
相続のための話し合いを行うと、今後の生活のための収入源を得たいので、賃貸アパートや貸家を自分が相続したいという相続人が出てきます。
これに対して、居住用不動産を取得した者は、賃料収入は入ってきません。
賃料収入の有無により、それぞれの将来の生活状況がかなり異なってきます。
このように収益不動産が遺産に含まれている場合に、相続人間で、不公平にならないようにするにはどうしたよいのでしょうか。
収益不動産の評価調査
収益不動産を適正に評価する必要があります。不動産の評価については以下のような価額があります。
これを「一物五価」といいます。
・固定資産評価額
・路線価
・公示価格
・標準価格
・不動産業者の査定額
・不動産鑑定士の鑑定額 などがあります。
そのため、それぞれ額が異なっているため、遺産分割の場面で、どの評価によればよいのか争いが生じることがあります。
居住用の場合は、路線価や近隣の取引事例価格などをもとに評価するのが一般的でしょう。しかし、一棟マンションやアパートなどの収益不動産の場合には、賃料収入などの収益をもとに算定する「収益還元価格」も使われます。収益還元価格は、その物件の年間賃料収入を、「還元利回り」で割り戻すことで計算します。
とくに、収益不動産の場合は、路線価と「収益還元価格」では値段の差が大きくなることがあります。
そのため、まずは、収益不動産の評価額をしっかりと把握しておくことが重要になります。
私どもの経験で、アパートの評価が争いとなったケースがありました。相手方は、不動産業者の査定書を提出してきましたが、こちらは念のため不動産鑑定士に依頼して「収益還元価格」を加味して評価してもらいました。その結果、業者査定価格で約1000万円、鑑定士による価格評価額で約2000万円と1000万円の差がでたことがありました。
最近は、このようなケースが多くあります。一度、ご相談をお勧めします。
評価のための情報収集
収益物件の評価の前提として,物件の年間賃料収入を、「還元利回り」で割り戻すことで計算することから、収益物件の契約内容、つまり賃借人が誰か,賃料がいくらか等の契約条件などの情報が必要となります。今後の収益見込みを把握するためにも賃料収入の情報が必要です。
アパートなどの場合には、故人が不動産業者などに賃貸の管理を委託していることが多いので、そのような場合には不動産業者に問い合わせをするとよいでしょう。
また、故人が賃貸業を営んでいた場合、賃料収入を申告しているはずです。過去の確定申告の資料があるはずです。相続発生により故人の賃料収入について準確定申告をしなければならないので、そのときを利用して調査してはいかがでしょう。
また,収益物件を相続すると,将来の賃料収入が得られますが、逆に賃借人から預かっている資金等の返還債務も当然に相続することになります。故人が預かっている敷金がいくらであるのかも調査しておく必要があります。
賃料の扱いですが、相続開始から遺産分割協議成立までの賃料には,法的には相続財産には含まれません。法律的には、相続開始後から分割協議成立までの間の賃料は各相続人が法定相続分の割合で賃料を取得することになっています。相続開始後の賃料をどのように処理するかについても相続人で話し合う必要があります。
不動産に関する借り入れについて
収益物件に債務がある場合があります。
たとえば、相続対策などのために借り入れをしてアパートを建設していた場合は、金融機関からの借り入れがたくさん残っていることがあります。
そのような場合には,今後の返済額と賃料などの収益がどうなっているのかを見ておく必要があります。返済が厳しい場合には相続放棄などを検討することもあるかもしれません。
金融機関からのローンは、収益不動産を相続しただけでは,当然にその相続人が相続することにはなりません。そのため、金融機関との間で、債務引受の手続きなども必要になります。収益不動産を相続しない相続人としては、ローンの債務者から外してもらい、すべての債務について収益不動産を相続した者に引き継いでもらう必要があります。
このように収益不動産が遺産に含まれている場合に荷は、一般の居住用不動産の場合とは異なる検討項目があります。収益不動産が遺産に含まれている場合には、専門家にご相談することをお勧めいたします。
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