生前贈与されてそれが不動産でも遺留分を請求できる?
- 2024.01.16
(1)遺言書によって多額の財産が特定の人に渡されると、そのため相続人が取得できる財産が減ってしまい、遺留分侵害(最低限保障されている取り分が取得できないこと)が起こりえます。
このほかに生前贈与であっても「遺留分」を侵害する可能性があります。あまりに多額の生前贈与が行われてしまうと、その結果、相続人の取得する財産が大きく減ってしまい、権利を害される可能性があるからです。
遺留分侵害となる生前贈与の財産にどのようなものがあるでしょうか。
生前贈与される財産としてもっとも多いのが現金ですが、遺留分侵害となる生前贈与はこれには限られません。現金以外であっても、遺留分侵害となる可能性があります。
(2)遺留分侵害の計算
生前贈与があればすべて遺留分侵害となるわけではありません。そのためには、遺留分の計算をしないといけません。
a まずは「遺留分の基礎となる財産」を明らかにします。
具体的には「相続開始時に存在した財産」から「負債」を控除して、以下の遺留分の対象となる生前贈与を加えます。
- 相続開始前1年以内の生前贈与
- 贈る側と受け取る側が遺留分を侵害すると知って行われた贈与
- 相続開始前10年以内に行われた法定相続人への生前贈与
法定相続人への生前贈与で含まれるのは「相続開始前10年以内」の生前贈与に限られます。そのため、たとえば、11年前の生前贈与などは遺留分計算の基礎にできません。
b 次に、遺留分割合を求めます。
たとえば2人の子どもが相続人となる場合、事案全体の遺留分割合は2分の1なので、子どもたちそれぞれの遺留分割合は2分の1×2分の1=4分の1ずつとなります。
c 最後に、遺留分の基礎となる財産額に遺留分割合をかけ算すれば、遺留分が算出されます。
(3) 生前贈与のパターン
これらの財産が生前贈与されるシチュエーションをいくつかあげてみます。
- 親がある子どもの結婚の際に高額な持参金を与えた
- 親が特定の子どもに不動産を贈与した
- 親が特定の子どもだけに高い学費を支払った
- 親が特定の子どものために事業資金を出した。
- 親が特定の子どもの借金の返済資金を出した。
このような生前贈与があったとしても下記①から③にあたるかどうかが重要です。
- 相続開始前1年以内に生前贈与ですか?
- 贈る側と受け取る側が遺留分を侵害すると知って行われた生前贈与ですか?
- 相続開始前10年以内に行われた法定相続人への生前贈与ですか?
遺留分侵害となるかどうか、そして遺留分侵害額請求をしていくことはなかなか難しいので、多額の財産が生前贈与されたかもと思ったら弁護士に相談することをお勧めします。