借金と不動産をどう整理する?高齢者が直面した複雑な財産承継の悩み
- 2026.05.05
相談者情報
-
相談者
- 小林さん(仮名) 女性 60代
-
居住地
- 茨城県水戸市
-
家族関係
- 配偶者(故人)
- 配偶者の子(相談者とは養子縁組なし)
- 姉(お金の貸主)
- 姉の孫(財産承継を検討している相手)
-
財産状況
- 自宅不動産(土地・建物) 相談者名義
- 預貯金 ほぼなし。
- パート収入
-
債務
- 姉からの借入:約400万円
- 子(配偶者の子 前婚の子)からの借入:約400万円
相談者の背景事情(モノローグ)
「夫が姉から生前に借りたお金を、今は私が返済していますが、年金生活では負担が重く、生活が厳しくなっています。
自宅の土地については、以前から姉側に売却する話もありましたが、私はその家に住み続けたいという思いがあります。
また、夫の子どもたち(血のつながりはなく、前妻との子)からお金を借りているのですが、その借金も自分の代で整理したいと考えています。
姉の孫がその返済資金を出してくれる話もあります。その資金を出してもらうのに、贈与や税金の問題、また返済として、姉の孫へ財産を渡す場合に、どの方法が一番よいのか分からず悩んでいます。」
質問と回答(Q&A形式)
質問①
「親族から資金を出してもらう場合、贈与税などの問題は発生しますか?」
回答
はい、可能性があります。特に、110万円を超える金銭の移動がある場合、贈与とみなされると贈与税の対象になります。そのため、そのお金を「貸付」として扱うのか「贈与」となるのかを明確にするため契約書などで整理しておくことが重要です。
質問②
「遺言で特定の人(姉の子など)に不動産を残すことはできますか?」
回答
可能です。姉の子は相続人ではないので相続させることができません。しかし、遺言により法定相続人以外の人に財産を渡す「遺贈」は認められています。
注意が必要なのは、相続人には「遺留分」という最低限の取り分があり、これを侵害すると、後から金銭請求を受ける可能性があるということです。
ただし、すべての場合に遺留分が発生するわけではありません。このケースで、あなたには子も親もいないため、遺留分の権利者がいません。
質問③
「自分が死んだ場合に、配偶者の子(養子縁組していない)に借金や財産は引き継がれますか?」
回答
引き継がれません。
法律上の相続人は、原則として実子または養子です。配偶者の子であっても、あなたがその人と養子縁組をしていなければあなたの相続人にはなりません。
そのため、借金や財産はその方には承継されず、代わりにあなたの兄弟姉妹(場合によっては甥姪)などの法定相続人に移ることになります。
アドバイスの要点整理
- 親族間の資金提供は「贈与」か「貸付」かを明確にする
- 高額資金の移動は税務リスクに注意
- 遺言により第三者への財産承継は可能(遺贈)
- ただし遺留分トラブルの可能性あり
- 配偶者の子は養子縁組がなければ相続人にならない
- 借金の承継先は法定相続人で決まる
- 「売買」で整理するのが最もシンプルで確実なケースが多い
弁護士の所感(結論)
本件は、「借金の整理」「居住の継続」「特定の親族への財産承継」という複数の要素が絡み合った複雑な事案です。
特に重要なのは、相続人の範囲の誤解です。配偶者の子であっても養子縁組がなければ相続人にならず、思いとは異なる形で財産や負債が承継されてしまう可能性があります。
また、「遺言で解決したい」という希望は多いものの、遺言は万能ではなく、遺留分や撤回リスクなどの問題も伴います。資金提供と引き換えに遺言で財産を渡すスキームは、慎重な設計が必要です。
本事例のようなケースでは、
- 売買による整理
- 債務の清算
- 公正証書遺言の作成
などを組み合わせた対策が有効です。
相続は「気持ち」だけでは解決できず、法的な整理が不可欠です。特に高齢になってからの財産整理は時間との勝負になるため、早めに専門家へ相談することを強くおすすめします。























