遺産内容を明らかにしてくれない弟との遺産分割、弁護士が介入することにより、相続分を大きく増額できた事例。
- 2024.01.08
依頼者の属性
水戸市にお住まい 60代 女性
相談内容
被相続人は、相談者のお父さん。相続人は兄弟2名。兄弟のお一人は判断力がない状態。弟がお父さんと同居していた。
お父さんが亡くなってから、弟が遺産内容を明らかにせず、相談者が1000万円を取得する、兄は現在居住している不動産を取得する、その他は弟が取得するとの遺産分割協議書案を送ってきた。
この遺産分割協議書の内容は相談者に不利ではないのかを確かめたい。また、遺産の額からすると、相続税申告の手続をしなければならないのに、なぜか弟は税理士に相談しようとしない。一方的に相続の話をまとめようとしているので、財産を明らかにして、公平に分割したい。
争点
被相続人の遺産の具体的な内容。
遺産うちの不動産の評価額。
弟に対する生前に特別受益がないか。あるいは、使い込みはないか。
遺産分割協議をするために、判断力のない兄弟にどのように手続に関わってもらい分割をするか。
弁護士による解決までの流れ
相談者が自力で被相続人の取引先の銀行から相続時の残高証明書と取引明細、そして固定資産税評価証明書を取得してくれたので、それをもとに遺産目録を作成し、遺産の額を計算したところ、遺産総額は約1億円であることがわかった。相続税の申告に関しては税理士に依頼することとなった。
遺産の総額をもとに計算すると、相談者の法定相続分は3分の1であるので、約3333万円が相続分であることが判明。これと弟の提案額の1000万円を比較したところ、本来取得できる相続額の3分の1程度であるので、遺産分割調停を申し立てることとした。
判断力がない兄弟については、成年後見人の選任も検討したが、家族から承諾を得られなかったので、特別代理人をつけてもらうことにした。
預金の払戻金で、金額が大きく使途がわからないものについて同居しお金を管理していた弟に対して説明を求めた。
また、不動産の評価について対立があったので、正式な鑑定までは行わなかったものの、当事者双方からそれぞれの依頼した鑑定意見書が提出された。
約2年間の時間を要したものの、調停が成立。
結果
相談者は今回の調停により2900万円の遺産を獲得。当初の弟の提案の1000万円から1900万円もの大幅な増額となった。
弁護士所感
判断力のない相続人がいたため一般の遺産分割よりも手続き的に難しい事件であった。相談者が弟から提案のあった遺産分割協議書案で納得せずに相談していただいたことから、時間を要したものの調停を利用して満足いただける分割ができた。まずは、気軽に相談することが大切と思う。