失敗しない弁護士の選び方
ご承知のとおり、最近では弁護士が運営しているホームページが多くなっています。そのため、どの弁護士に相談すればいいかわからず迷ったというお声も聞かれるようになってきました。そこで、弁護士を20年以上経験してきた私から弁護士の選び方のポイントをお伝えしたいと思います。
①相続問題に関して解決実績を多数持つ弁護士を選びましょう
②弁護士にかかる費用を丁寧に説明する弁護士を選びましょう
③話を最後まで聞き、メリット・デメリットの両方を説明する弁護士を選びましょう
相続問題に強い弁護士は意外に少ない?弁護士によって結果・満足度が変わる可能性も?
①相続問題を依頼するなら解決実績を多数持つ弁護士を
最近はいろいろなホームページで「相続に強い」といった表現が見られるようになりましたが、本当に相続に詳しいかどうかは分かりません。実は、統計的に考えてみると、1年間に発生している相続トラブルの件数は、日本全国の弁護士数と比べると、その半分もありません。単純計算をすると、1人の弁護士が2年に1度しか相続事件を依頼されていない計算結果となります。一般的な言い方をすれば、弁護士だから相続に強いとはいえません。相続事件を解決した経験が非常に少ないか、もしくは扱った経験がない弁護士が数多く存在しているといえます。
※司法統計の遺産分割調停の1年あたりの終結件数が13,000件前後で弁護士は現在4万人以上いることから半分以下としています。
やはり客観的な裏付けが必要です。そこで、その弁護士の相続問題についての解決件数を尋ねてはいかがでしょうか。
経験が少ない、あるいは扱った経験がない場合の影響ですが、結果に大きな影響を及ぼすことが多くあります。というのは、相続、とくに遺産分割は遺産の分け方のルールについて細かい規定があるため、どこの点をどの段階でどのように主張するのかが解決のポイントになります。知識も必要ですが、経験によって結果が変わってしまうことがあります。したがって、経験豊富な弁護士を選ばれることをおすすめします。
ちなみに、実績の有無は年齢とは必ずしも比例しません。若くとも相続問題を多く扱う事務所に在籍している弁護士であれば、安心して依頼していいかと思いますが、逆に年齢を重ねた弁護士でも実際には相続案件の経験数が少ないということもありますので、弁護士歴よりも解決件数に注目すべきかと思います。
また、解決実績にはなりませんが、家庭裁判所の家事調停委員を経験したことがある弁護士であれば、一般の弁護士の代理に的な立場からのみ案件を見るのとは異なり、裁判所的な立場から案件を見ることができると思います。そのため、ご依頼の案件がこれから先どうなるのか、調停・審判・訴訟となったときのことまで考えて全体を考えた上で案件を見立てることができるように思います。
②弁護士にかかる費用を丁寧に説明する弁護士に依頼を
弁護士にご相談いただく際にご不安に思われるのは「弁護士費用=料金」のことではないでしょうか。
私どもがお客様から聞いた話では、弁護士によっては内訳や理由などを詳しく説明せずに口頭で「100万円くらいかかりますよ?やりますか?」と提案する先生もいるようです。お金のことは聞きにくいかもしれませんが、ぜひ、不明な点は質問をしてください。後からこんなはずではなかったとならないようにお金の説明を丁寧にしてくれる弁護士を選ぶべきです。見積書をもらうと、具体的な内容がわかるので、見積書をもらってください。
しかし、弁護士の業界のお金に関する言葉がよくわからないという方が多いため、ここで簡単に解説させていただきます。
着手金
着手金とは、結果的に成功、不成功があるときに、結果にかかわらず弁護士が手続を進めるために着手時に支払う費用です。報酬金とは別で、手付ではありません。
報酬金
報酬金とは、結果の成功の程度に応じて支払う成功報酬のことをいいます。
従って、完全に敗訴となれば、報酬金は発生しません。
出張日当
弁護士が出張する際にいただく費用です。
交通費
交通費とは、遠方の裁判所等へ出張する際にかかる交通費です。
印紙代
印紙代とは、裁判所へ申立等をする際に貼付する印紙代のことです。
不動産鑑定費用
不動産鑑定費用とは、不動産の正確な評価額を算出するために不動産鑑定士にお支払いするものです。
実費
実費に含まれる主なもの
・全部事項証明
・戸籍取得費用
・手紙の受発送の費用
③話を最後まで聞いてくれて、メリット・デメリットの両方を説明する弁護士に依頼をしましょう。
最後にお伝えしたいのは、あなたの話をしっかり聞き、そのうえでメリットもデメリットも伝える弁護士に依頼すべきということです。
相談者から「他の弁護士事務所に行ったら、一方的に話されて話をよく聞いてくれなかった」や「よくわからないのに、叱られて怖かった」という声を聞くことがあります。このように弁護士がきちんと話を聞いてくれなかったと不満が意外に多いものです。
私たちが考えるよい弁護士とは、相談者の方から事情と希望をしっかり聞いたうえで、その希望を実現するための方法や、実現できるかどうかを率直に伝えられる弁護士です。
相続に関する法律上の決まりには、感情的には納得しにくいこともあるのが現実です。
例えば、介護と寄与分に関する問題です。介護を一生懸命していた相続人と、全くしていなかった相続人が、遺産は半分ずつ分けることが決まりなのが法律の世界です。普通に考えれば介護をまったくしていない相続人と相続分が同じになることはおかしい、介護したことが寄与分として認められないのはおかしいと感じるでしょう。しかし、現実には、介護がストレートに寄与分として認められるものではありません。
私たちは希望通りにいかないリスクがあることはきちんとお伝えするようにしています。希望どおりにいかないリスクを示されたら納得できないかもしれません。しかし、リスクがあるのにそれを曖昧なままにしてしまうと、結果として、こんなはずではなかったのにという結末を迎えることになりかねません。
ですから、ご相談者のために、リスクがあるなら曖昧にせずに、きちんと率直に話してくれる弁護士をお勧めします。
自分にとって厳しい見通しが伝えられても、この弁護士が言うのであればしかたがないかなと思えるくらいにその弁護士のことを信頼できるかどうかが大切です。その意味で弁護士との相性も重要です。
あなたの未来にとって本当によい提案をしてくれる弁護士かどうかを見極めることが重要です。
最後
最後になりますが…
弁護士に依頼する目的は、相続する遺産をより増したいと考えてのことがほとんどかと思います。そうすると、遺産を増やせないなら依頼しなくともよいのではないか、無駄ではないかと考えるかもしれません。
しかし、弁護士に依頼することで、気持ちが楽になります。こちらも重要なことです。
他の相続人と間で、相続トラブルが発生しているときには、相手とのやり取りや裁判所へ提出する文章の作成などをすべて自分で行うのは、精神的にかなりキツいものがあります。相続トラブルのために、食欲不振、睡眠不足などで悩まされる方も多いです。
弁護士に任せることで、精神的に非常に楽になることができるため、相手とのやり取りのクッションとして弁護士を活用していただくのも大切なことだと考えています。