遺産分割後に新たな遺産が見つかった場合の対応方法は?
- 2024.04.08
いったん遺産分割をした後に、新たな遺産が見つかった場合はどうしたらよいでしょうか?
たとえば、遺産分割をしたときにはわからなかったが、分割をした後に、銀行や証券会社から通知がきて、新たな預金口座や証券口座が見つかる場合もあります。最近は、ネット銀行やネット証券などの取引をしている人も増えてきているので、しばらく預金口座や証券口座があったことを知らないでいることもあり得ます。
遺産分割協議書の定めはどうか。
まず、遺産分割協議書に「新たな財産が発見されたときの対処方法」が定められていないかどうか見てください。
たとえば以下のような定めがある場合があるかもしれません。
①新たな財産が発見された場合、相続人〇〇が全部受け取る
②新たな財産が発見された場合、法定相続人がそれぞれ法定相続分に応じて取得する
このような定めが遺産分割協議書にある場合は、その定めに従って、取得することになります。
問題は、これらの定めがない場合です。
そのような場合に、見つかった預金や証券だけではなく、先に分割した遺産も含めてすべてをいったんご破産にして、新たに遺産分割協議をし直さなければならないのでしょうか。
見つかった遺産のみを分割
新たに遺産が見つかった場合には、原則として、見つかった新たな遺産のみについて遺産分割協議をすればよいと考えられます。いったんした遺産分割協議は新たな遺産が見つかったというだけで無効になってしまうわけではありません。
しかし、その場合でも、相続人全員が話し合い、既にした遺産分割協議を最初からやり直すことに全員が同意している場合は、遺産分割協議のやり直しも可能です。
遺産分割協議の取り消し
原則として、すでに行った遺産分割協議は有効なので、やり直す必要はありませんが、例外的に、やり直ししなければならない場合もあります。
たとえば、新たに見つかった遺産の存在について以前から知っていたのに、一部の相続人がその遺産を隠していた場合や新たに見つかった遺産の価値が高く、そのためにすでに成立した遺産分割協議への影響が大きくなる場合も取り消しとなる場合があります。
たとえば、ある相続人から遺産内容について知らされたときに、ほとんど財産がないということであったことから、「この程度しか遺産がないのであれば自分としては〇〇くらいもらえればよい」と言って遺産分割協議をしたとしましょう。
遺産が総額で500万円で土地しかないならしかたがないので自分は100万円の土地でよいといった遺産分割をしたとします。
ところが、その後に、非常に価値のある評価額の高い財産、1000万円の預金が見つかったとします。100万円で分割協議をした相続人としては、それなら土地ではなくお金が欲しかったとと考えることもあるかもしれません。このような場合には、相続人は「錯誤」を理由として、遺産分割協議を取り消し分割協議をやり直すよう主張することもできます。
「錯誤」とは、わかりやすく言えば、「勘違い」や「間違い」のことです。「錯誤」は、表意者が意思表示を無意識に誤った場合に、意思表示から推察される内容と本人の意思が食い違っている状態を指します。法律的に錯誤があると、意思表示を取り消して契約をなかったことにできるなどの効果を得られます。
ただし、勘違いしたというだけではなく、その錯誤が「法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」に取り消すことができると限定されています。つまり、新たに見つかった遺産の価値が高く、そのためにすでに成立した遺産分割協議への影響が大きい場合です。
その他に、詐欺となる場合もあるかもしれません。
いずれにしても、これらは複雑な法律問題となりますので、もし遺産分割協議のやり直しが可能かどうかご検討されている場合には、弁護士に相談をすることをお勧めいたします。