【相談事例】共有名義の山林、連絡が取れない共有者の相続人とどう交渉するか
- 2025.07.22
依頼者情報の整理
相談者
田中さん(仮名)
相続関係の中心人物
田中さんの祖父(被相続人)、父(既に故人)
関係者
現在、共有者の1人(斎藤氏)は故人と思われる
遺産内容
茨城県内の山林(土地)約1500坪(固定資産税評価額16万4340円、相続税評価額805万円相当)
相談者の背景事情
「約25年前に、土地の相続が決着し、遺産分割の結果として、私は共有の土地の4/5を取得しました。当時は早く終わらせたくて、あまり深く考えずに共有の土地を相続しました。それからずっと放置していたのですが、今になって業者から『その土地を買いたい』という申し出がありました。そこで、相続した土地の共有者(持分1/5)と連絡を取ろうとしたのですが、音信不通です。書類上の住所にも届かず、既に亡くなっている可能性もあります。どう進めればいいか、専門家の力を借りたいと思い、相談に伺いました。」
質問と回答
質問①
「共有名義の土地で他の共有者に連絡がつかない場合、どうすればよいですか?」
回答
他の共有者が亡くなっている可能性がある場合、その相続人を調査する必要があります。弁護士であれば戸籍の追跡が可能で、相続人を特定するための調査を進めることができます。相続人が複数存在する可能性もありますが、その相続人に対して意思確認や交渉が可能になります。
質問②
「共有物を売却したい場合、相手にどうアプローチすればよいですか?」
回答
共有不動産の売却には、原則として共有者全員の同意が必要です。連絡が取れた場合は、代償金を提示して買い取り交渉をするか、分割協議を進めることになります。連絡が取れないままでは売却できないため、共有者の相続人が確認でき次第、文書での連絡や面談を試み、交渉が不調ならば最終的には「共有物分割請求訴訟」を提起することも検討します。
質問③
「相続登記をしないまま放置している土地がもう一つあるのですが、どうしたら良いですか?」
回答
2024年4月から「相続登記の義務化」が始まっており、相続発生から3年以内の登記申請が義務づけられました。違反すると10万円以下の過料が課される可能性があります。草刈りや管理をしている状況でも、登記を怠っていれば義務違反になるため、早めに相続登記を済ませておくことが大切です。そのためには、まず話し合いをしてみてください。もし、話し合いが難しいようであれば、弁護士に依頼して分割協議をしてはいかがでしょう。
要点整理
- 連絡不能な共有者の相続人は弁護士を通じて戸籍調査可能。
- 共有物分割の方法は3つ:
- 現物分割(土地を分筆して物理的に分ける)
- 代償分割(他共有者が持分を買い取る)
- 換価分割(土地を第三者に売却して代金を分ける)
- 相続登記の義務化(2024年~)により相続した不動産の登記をせずに放置することはリスクがある。
- 固定資産評価額や相続税評価に基づいて妥当な買収金額を提示することが交渉の糸口となる。
共有不動産は“放置しない”が鉄則
本事例のように、古い共有名義の不動産を長期間放置していると、売却や利用の際に大きな支障が出ます。特に共有者が亡くなっている場合、その相続人が複数存在していると、全員と交渉しなければならず、時間もコストもかかります。
共有持分を整理して単独所有にするには、代償分割で買い取る交渉が最も現実的な方法です。逆に、分筆や換価分割は物理的・法的なハードルが高いため、事案に応じて選択肢を検討すべきです。
また、2024年から始まった「相続登記義務化」の影響で、放置された土地は過料リスクを抱えます。今後のトラブル防止のためにも、登記・調査・交渉を早めに専門家へ依頼することを強くおすすめします。