【相談事例】協議に応じない相続人との交渉と遺産分割の行方
- 2025.07.22
依頼者情報の整理
相談者
小林二郎さん(仮名)
年齢・職業
年齢50代 男性
被相続人
小林さんの父(故人)
相続人
母(83歳、要介護状態だが判断能力あり)、長男(一夫さん、すでに関与は消極的)、相談者(小林二郎さん、次男)、姉(みち子さん、腹違いの姉、非協力的)
相談者の背景事情
「父が亡くなり、相続が発生しました。兄と私と母の3人で進めるつもりでしたが、戸籍を取ったところ、父と離婚した元妻との間に信子という姉がいたことが判明しました。何度も交渉を試みましたが、『あなたたちとは関わりたくない』『判子も押さない』と突っぱねられてしまいました。母は高齢であり、体調も優れず、限界が近いと感じています。兄は面倒くさいことが嫌いなため、お前に任せるとのことで、ほぼ私が相続の取りまとめ役です。このままでは何も進まないため、家庭裁判所での調停も視野に入れています。」
質問と回答
質問①
「兄が父の生前に預金を100万円払い戻して自分のために使ってしまった部分があるようです。これはどう扱われますか?」
回答
「生前に被相続人の預金を引き出していた事実がある場合、お父さんに無断で払い戻して使ったのか、それともお父さんから生前贈与をうけたのかで異なります。無断で使い込んでしまった場合には、不法行為や不当利得として返還しなければなりません。お父さんから生前贈与を受けたのであれば、それは『特別受益』として相続分に反映される可能性があります。いずれにせよ、今回のように100万円程度を使っていたなら、相続分からその金額を差し引いて調整する形になります。」
質問②
「異母姉にどうしても応じてもらえない場合、どのような手続きを取ればよいですか?」
回答
「家庭裁判所での遺産分割調停を申し立てることが考えられます。書面や口頭で交渉が行き詰まった場合、家庭裁判所を通じて調停で話し合いを進めることができます。最終的に調停が不調に終われば審判に移行し、裁判所が分割内容を決定します。」
質問③
「遺産には不動産があるのですが、母に取得してもらいたいと考えています。相手にお金を渡して解決することは可能ですか?」
回答
「はい、可能です。たとえば、相続財産のうち不動産をあなたの母さんが単独で相続し、その代わりに異母姉には現金で法定相続分(今回なら約300万円)を支払うという『代償分割』の方法が取れます。」
要点整理
• 相続分の計算は、法定割合に基づき算出される。異母姉は1/6の相続権を持つ。
• 兄が使い込んだ100万円については、特別受益として調整の対象。
• 応じない相続人がいる場合、家庭裁判所での調停手続が有効。
• 居住している不動産を取得したい場合は、他の相続人にお金を支払う代償金分割も可能。
弁護士所感
今回の事例では、相続人間の感情的な対立が交渉を難航させています。特に、過去の家庭事情が影響して協議が進まないケースは多く見受けられます。本件では、法定相続分に基づいた代償分割により、母親の生活を守りながら円満な解決を目指すことが可能と考えます。
重要なのは、感情のもつれを一度切り離し、相続法の原則に則って冷静に進めることです。交渉が困難な場合は、家庭裁判所の調停を利用し、第三者を介した話し合いの場を設けることが最も現実的な解決策です。
また、特別受益の取り扱いや、遺産分割協議、分割協議書の作成、調停申立には、専門家の関与が不可欠です。当事務所では、調停申立てや協議書の作成支援も行っておりますので、お困りの際はぜひご相談ください。