【相談事例】弟の死後に判明した借金問題と相続放棄の進め方
- 2025.07.22
依頼者情報の整理
氏名
佐藤さと子さん(仮名)
住所
茨城県水戸市
相談者の立場
被相続人(弟・佐藤健一さん)の姉
被相続人
佐藤健一さん(2025年4月死去)
相続人
健一さんの子(長女・次女・長男)→いずれも相続放棄済
代襲相続候補者
姉の佐藤さと子さん、妹2名(佐藤美紀さん・佐藤洋子さん)
その他関係者
弟の元妻(離婚済)、妹との不和あり
相談者の背景事情
「4月に弟が亡くなりました。両親はすでに他界しており、相続人は弟の子どもたち3人ですが、全員が相続放棄したようです。弟はかつて会社を経営しており、倒産後も保証人として多くの借金が残っていたようです。妹たちとは親の相続時に揉めて絶縁状態で、連絡も取れません。弟の死後、私に相続の順番が回ってきそうで不安になり、相談に来ました。」
質問と回答
質問1
「弟の子どもたちが相続放棄しました。私たち姉妹に相続が回ってくるのは本当ですか?」
回答
はい、その通りです。相続放棄をした場合、放棄した者は最初から相続人でなかったことになります。その結果、次の順位の法定相続人に相続権が移ります。今回、佐藤健一さんの子ども3人が相続放棄をしたため、兄弟姉妹(さと子さんとその妹2名)が相続人となります。
質問2
「相続放棄の手続きは、具体的にどうすればいいですか?」
回答
相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。必要書類は主に以下のとおりです:
• 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本含む)
• 自分の戸籍謄本
• 相続放棄の申述書(家庭裁判所所定様式)
ただし、今回は甥姪から戸籍一式を「貸してもらう」形が最も効率的です。既に司法書士が手続き済みであれば、それを貸してもらうよう働きかけましょう。ご自身が相続人となった証明が取れ次第、そこから3か月以内に提出すれば問題ありません。
質問3
「保証人として病院やアパートの書類に名前を書いたことがあります。相続放棄しても支払義務はあるのでしょうか?」
回答
保証人としての責任と、相続人としての責任は別物です。仮に病院の入院契約やアパートの契約で「保証人」になっていた場合、その契約は相続とは無関係に「個人の債務」として履行義務が発生します。一方、弟さんの債務(借金・税金・保険料など)は相続放棄により一切負担する必要がなくなります。保証人でない限り、弟さんの支払い義務が自動的に自分に降りかかることはありません。
要点整理
• 弟の子3人が放棄すれば、兄弟姉妹が相続人となる
• 放棄の起算日は「放棄の受理証明書を受け取った日」から3か月
• 放棄には戸籍収集が必要。甥姪から借りることで効率化可能
• 保証人の契約があれば、放棄しても支払い義務あり
弁護士所感:相続放棄の連鎖と兄弟姉妹の責任
この事例は、相続放棄の連鎖によって法定相続人が繰り上がるケースの典型です。特に、事業を営んでいた被相続人に多額の負債がある場合、相続放棄は重要な防衛手段となります。一方で、親族関係の断絶や感情的な対立があると、手続きが停滞しやすい点に注意が必要です。
不透明な借金がある場合や、親族間で連絡が取りづらい場合などは、早めに法的な確認を取り、不測の責任を負わないよう慎重に行動することが望まれます。
相続トラブル・調停のご相談は、みとみらい法律事務所へ
相続放棄は、「相続人であることを知ってから3か月以内」に行う必要がある法的手続きです。
本件のように一次相続人(子)が全員放棄すると、次順位である兄弟姉妹に相続が回ってくる可能性があります。
そのため、負債相続のリスクがある場合は、他の相続人の放棄状況を確認し、自身に責任が回る前に速やかに対応することが重要です。
保証人であるか否かも個別に精査する必要がありますので、不安がある場合は早期に弁護士へご相談ください。