【遺産分割調停】弟が怖い、調停でどうなるかが心配
- 2025.07.22
依頼者情報の整理
相談者
70代女性(仮名:佐藤恵子様)
関係者構成
母(被相続人)令和5年10月5日逝去
相手方
弟、過去に父の相続でも問題があった
背景
父の相続について、弟がすべての財産を「自分のもの」と主張して揉めたことがある。今回も揉めそうな感じがしている。
相談者の背景事情
「母が亡くなり、相続の手続きが必要になりました。私は不動産の管理や所有には関わりたくないので、すべて弟に譲るつもりです。預貯金の一部だけを希望しています。しかし、弟は過去に父の財産でも自分の言い分が通らないと一切妥協することがなく、その結果、調停では終わらずに、裁判を起こすなどしました。弟は常識的な対応が通じない性格。私としてはスムーズな解決を望んでいますが、正直、何を言い出すか予想がつきません。怖いです。」
質問と回答
質問1
「不動産を相続せず、預貯金だけを取得する方法はありますか?」
回答
「可能です。遺産分割の協議や調停において、相続人間で合意があれば、特定の相続人が不動産をすべて取得し、他の相続人が預貯金のみを取得するという形での分割ができます。これは『代償分割』や『現物分割』を組み合わせた柔軟な方法で、実務上もよく用いられます。相談者のように高齢で不動産の管理が困難な場合、このような分割方法を望むことは合理的であり、相手方と合意が形成できればスムーズに実現可能です。」
質問2
「相続税の申告期限が迫っている中で、預金を引き出して税金を払いたいのですが、可能ですか?」
回答
「相続税の納付期限は被相続人の死亡後10か月以内です。調停が成立しない限り、単独では預金を引き出すことはできません。しかし、相手方も相続税の納付の義務があります。そこで、相続税の支払いについてはお互いに協力することが考えられます。相手方の同意が得られれば、預貯金の一部引き出して相続税に充当することが可能です。そのためにも税理士に依頼して、相続税の額を明確にして調停の場で説明する必要があります。」
質問3
「相手方が話し合いを引き延ばす、あるいは恫喝してくるような場合、どう対応したらよいですか?」
回答
「調停で同じ部屋で直接話し合うというスタイルはとられていません。一般的には、当事者の片方ずつから調停委員が話をうかがいながら進めていきます。また、調停では調停委員が両者の間に立ち、冷静に話し合いが進むよう配慮されます。恫喝的な態度が見られた場合は、その場で記録され、調停不調となれば審判に移行することもあります。審判では裁判官が法律に基づき判断することになります。」
要点整理
• 代償分割または他の相続財産との調整で現金などを取得可能。
• 相続税申告のための預金払い戻しには、調停での合意が必要。
• 相手方が調停を引き延ばす場合、審判への移行も検討できる。
• 相続税の申告には期限があるため、税理士との連携と調停の迅速化が求められる。
弁護士所感:不動産譲渡の意志が明確な調停では、交渉の主導権を取れる
今回のように、相談者が不動産には一切の取得を希望せず、預貯金の一部だけを相続したいというケースでは、調停の方向性が明確であるため、交渉を優位に進めやすいといえます。
ただし、相手方が常識的な対応を取らない可能性がある場合、調停が長引くリスクや審判への移行も視野に入れるべきです。
特に相続税の申告期限(10か月以内)という現実的な制限がある中では、調停の中で早期に合意を得て、預金の一部を税金支払いに充てる合意を形成することが非常に重要です。
まとめ・ポイント
• 「不動産は譲る、預金のみ希望」という相続方針は有効な交渉戦略
• 相続税支払いには調停での合意形成が必須
• 相手が強硬姿勢でも、審判移行で法的決着を図れる
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