遺産分割において相続人ではないと主張された事例
- 2025.01.15
本事例では、長年内縁関係にあった夫婦が亡くなる半年前に婚姻をしたものの親族からその婚姻は無効、相続人ではない主張された案件です。
依頼者の属性
依頼者名: 小林さん(仮名)
居住地: 日立市
性別・年齢: 女性・70代
争点
婚姻無効主張による相続人としての資格の有無
遺産分割協議
ご相談の背景
被相続人である小林和夫さん(仮名)が令和4年4月に亡くなり、約1億円の遺産(主に預金)を残しました。
和夫さんと依頼者は20年以上内縁関係にありましたが、久夫さんの体調が悪化したことから、それをきっかけに婚姻届を提出しました。しかし、他の相続人である甥姪らは、その婚姻について亡くなる2か月前になされたことから判断能力が無かったのではないか、だとすると「婚姻無効」になる。そうであれば、小林さんは配偶者ではない、そもそも相続の資格はないと主張してきました。このような主張であったため、話し合いをしても、いっこうに協議が進まないため、相談にきました。
弁護士の対応
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事実確認と婚姻の有効性の分析
婚姻関係が無効となるかを争ってきていますので、まず、婚姻届を提出する時期の被相続人の判断力があったかが問題です。そして、そもそも、なぜ婚姻することになったのか、その経緯も重要です。そこで、届出の時期の被相続人の状況を確認し、さらに、それまでのお二人の関係性、同居や生活実態、婚姻届を提出するに至った経緯を聴き取りました。聴き取りの結果、お二人の婚姻が有効であること、依頼者が配偶者として相続の資格を持っていることを確認することができました。
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調停と交渉の主導
なかなか相手方が動かないことから、こちらから遺産分割の調停を申し立てました。家庭裁判所で話し合いをしたところ、相手方らは、あくまでも小林さんには配偶者の資格はないと主張していました。これに対して、こちらは、婚姻に至る状況、婚姻届の際の状況からすると婚姻届は有効であると説明しました。
ところが、相手方は、遺産分割の獲得金額にこだわっていました。調停では、婚姻無効を言わないけれども、少なくとも、相続分の半分を欲しいと言ってきたのです。今回の相続は、子どものいない配偶者と兄弟姉妹のケースです。本来の相続分はというと、兄弟姉妹4分の1、配偶者4分の3です。兄弟姉妹、甥姪は、生前に、被相続人のためにいろいろと貢献していたわけではありません。それにもかかわらず、相続がおこったから、いくらなんでも、半分を取得したいというのは納得できません。
そこで、あくまでも、こちらは配偶者4分の3,相手方4分の1、法定相続分をベースに分割することを主張した結果、相手方が2分の1に固執し、訴訟で婚姻が無効であることをはっきりさせたいと主張し、話し合いができず、調停は不成立となりました。
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解決案の提案
調停が不成立となり、相手方は、婚姻が無効で、相続人の資格がないと主張していることから、婚姻無効を確認する民事訴訟を提起して判決を取得しなければなりません。ところが、待っていても、なかなか訴訟提起をしてきません。そこで、このままでは、遺産分割が進まないまま長期間が経過してしまうと判断し、すみやかに遺産分割を進めたいと依頼者が希望してきました。そこで、訴訟前に、再度、交渉を始めました。交渉では、もし訴訟、そしてそこから再び、遺産分割となった場合に長期間を要することなどを考慮して、若干、相手方に譲歩する内容の分割案を提示することにしました。
結果
相手方が妥協し、最終的に以下の条件で合意が成立しました。
総遺産 約1億2600万円
依頼者の取得分: 約8,600万円
相手方の取得分:約4000万円
これにより、遺産分割は解決しました。
弁護士所感
複雑な遺産分割問題も、専門家の助言により円満解決が可能です。今回も、いろいろな問題がありましたが、協議により解決することが出来ました。
しかし、もしという視点が考えてみると、生前対策で可能なことがありました。今回の場合は、生前対策で、遺言書を作成しておけばよかったケースです。配偶者に全財産を相続させるとの遺言があれば、兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分が無いので、兄弟姉妹に対して、まったく支払う必要はありません。もし、そのような遺言があったら、今回のように約4000万円も支払う必要はありませんでした。
このように法的な知識があると最適な結果を得ることが可能です。相続問題でお悩みの方は、一人で抱え込まず、ぜひご相談ください。法的手続きの活用により、不安を解消し安心した生活を取り戻せます。