会社経営者である父の相続に伴う遺産分割をサポートした事例
- 2022.04.30
相続財産
会社の株式の他に、自宅土地建物とその他の土地、預貯金などがありました。
相続人関係
お母さんは既に亡くなっていましたので、相続人は、ご依頼者、その妹さん2人です。
相談背景
ご依頼者は、日立市にお住まいの方でした。ご自身が経営している会社とお父さんの相続のことで相談に来られました。
この会社は、家族経営の会社です。70%の株式をお父さんが、残りの30%をお母さんが保有していました。長年、お父さんは代表取締役として、ご依頼者はお父さんの経営を支える専務としてやってきましたが、お父さんが70歳になったときに現役を退き、その後は、ご依頼者が社長として会社の経営を行ってきました。ところが、最近になって、お父さんが亡くなりました。
妹さんたちは、近隣の市に住んでおり、経営には関与していません。ご依頼者は、お父さんの生前に,自分が亡くなった後に会社の経営がどうなるが心配だったため,お父さんの意向を確認したことがありました。その時は「自分が持っている会社の株式を全部お前に相続させるつもりだ。その内容の遺言を書いておいた」と聞かされていたそうです。しかし,お父さんが亡くなってから、遺言書を探したのですが、どこにもありませんでした。
新盆の頃に、妹さんたちからそろそろ相続の手続を進めたいとの話が出ました。ご依頼者が、相続財産を調べたところ、会社の株式の他に、自宅土地建物とその他の土地、預貯金などがありました。
ご依頼者は、生前に、お父さんから株式を全部お前に相続させるつもりだという話しを聴いていたので、株式はすべてご自身が相続したい、それとご依頼者がお父さんと一緒に住んでおられた自宅の土地建物を取得したい、残りの貯金等については、3等分にしたいとのお考えをお持ちでした。
しかし、お父さんから株式を全部お前に相続させるつもりだと聞かされていたものの、あくまでも口頭の話しでしかなく、遺言書がない以上、権利主張ができないのではないかとも考えておりました。そこで、なるだけ、妹さんたちともめないように話しを進めることはできないだろうかとご相談がありました。
弁護士の対応
そこで、初期の交渉段階では、弁護士が前面には出ずに、ご依頼者を影からサポートさせていただくことにいたしました。というのは、弁護士が前面に出てしまうと、他の相続人も身構えてしまい、遺産分割の交渉がスムーズに進まなくなるおそれがあるからです。
ご依頼者に基本となる資料の収集をしていただき、こちらでそれをもとに財産目録とその評価額を記載したものを作成しました。それをもとに交渉していただいたのですが、ご依頼者が希望のものを取得するとかなりの金額の代償金を支払わなければならないことがわかりました。そこで、交渉の基本姿勢として、ご依頼者には、妹さんたちのお気持ちを刺激しないように、低姿勢でお話しすることをお願いしました。相続の場合は、相手から尊重されていない、軽んじられたのが許せないとなり、熾烈な相続争いになることが多いからです。
結果
低姿勢で丁寧にお話しいただいた結果、妹さんたちも、財産が欲しかったわけではないし、お父さんが作った会社をなくしてしまうのは本意ではないと態度が軟化し、無事に遺産分割協議が成立しました。
弁護士が裏方に回りサポートすることで、早期に、もめることなく解決ができ、大変に満足していただきました。